《聖天講式》興教大師·作


『敬って 金剛胎蔵両部曼荼羅(こんごうたいぞうりょうぶまんだら)九會十三大會諸尊聖衆(くえじゅうさんだいえしょそんしょうーしゅうー・・)』
敬禮金剛胎藏兩部曼荼羅九會十三大會諸尊聖眾


『殊に別しては 大聖大悲歓喜大天 雞羅山中(けいらせんちゅう)諸大眷属乃至(しょだいけんぞくないし)佛眼所照(ぶつげんしょしょう)恒沙塵数(ごうしゃじんずう)の境界(きょうがい)に白(もう)して言(もう)さく・・』
殊別本尊大聖大悲歡喜大天雞羅山中諸大眷屬乃至佛眼所照恆沙塵數之境界而白言


『夫(そ)れ大聖歓喜天王は、功徳は天よりも高く利益は地よりも広し。十方(じっぽう)に周遍して三宝(さんぽう)を衛護す。』
夫大聖歡喜天者,功德高過諸天,利益廣過大地。十方周邊護衛三寶。


『元は即ち等覚(とうがく)妙覚(みょうがく)の尊なり。位を無垢地の月に秘し、迹(あと)は亦(また)、男天女天(なんてんにょてん)の體(たい)也。』
本體即等覺妙覺尊。男天女天之體,其位跡如無垢地月也。


『化(け)を有漏界(うろうかい)の雲に垂(た)る、大慈大悲の本誓(ほんぜい)疑いなし。利物利生(りもつりしょう)の方便頼有り。是を以って福徳、才智、武勇、敬愛、願いを応じて之を施す。降魔(ごうま)、調伏(ちょうぶく)、徐病、延命、祈りに随って之を成ず。道俗(どうぞく)貴賤(きせん)誰が帰敬(ききょう)せざらんや。』
垂有漏界之雲,大慈大悲無疑本誓。利物利生之方便,應福徳、才智、武勇、敬愛、之祈願。降魔、調伏、徐病、延命、隨祈即成。道俗貴賤皆歸敬。


『密かに以(おもんみ)れば、億々生死(おくおくしょうじ)の内、受け難きは人身。劫々流転(ごうこうるてん)の際にも、遇い難きは佛教なり。偶々(たまたま)受け難き人界の生を受け、幸いに遇い難き聖天の法に遇う。奇縁の至り感涙抑え難し。』
密以,億萬生死中受難受之人身,流轉生死之際,遇難遇之佛法,如此偶然之中托生人界遇難遇之聖天之法實屬幸運,感激落淚之奇緣。


『当に今、丹棘(たんきょく)を心中に凝らし香花(こうけ)を宝前に備え、霊天の徳を讃じ以って二世(にせ)の悉地を祈る。』
當前,心中丹棘凝作香花於寶前備,讚靈天之德祈二世悉地。


『毎日の勤めとなして以って一座の講莚を述ぶ。今、此の講莚を略して五段あり。ひとつには本地(ほんぢ)の高廣(こうこう)なるを嘆じ、二つには垂跡(すいじゃく)の化導(けどう)を讃じ、三つには誓願の殊勝なるを明し、四つには利益の無辺なるを仰ぎ、五つには廻向発願(えこうほつがん)を述ぶるなり。』
每日勤以一座講筵略五段而述。一嘆,本地高廣,二讚垂跡化導,三明誓願殊勝,四仰利益無邊,五則迴向發願。


『第一に、本地の高廣なるを嘆ずとは(者=いつぱ≒は)。大聖歓喜天王は陰陽二道の根源なり。萬像是より生長す。金胎両部の教主なり。諸佛これに因って降誕(ごうたん)し賜う。』
第一嘆本地高廣。大聖歡喜天乃陰陽二道根源。萬像自此生長。金胎教主也,諸佛所降誕之因。


『然る間、花翼國土(かよくこくど)に毘盧遮那(びるしゃな)と現じ、成等正覚(じょうどうしょうがく)の道を助け、香集世界(こうじゅうせかい)には大虚空蔵を示し、福智厳淨(ふくちごんじょう)の門を開く。胎卵湿化(たいらんしっけ)の群萌(ぐんぼう)をして、従行向地(じゅぎょうこうち)の聖位に進ましめ賜う。』
然間、花翼國土中現毘盧遮那成等正覚之道,香集世界示大虚空蔵,開福智厳淨之門。胎卵湿化群萌進従行向地聖位。


『誠に往古(おうこ)の如来法身(にょらいほっしん)の大士なり。所居(しょこ)を尋ぬれば、即ち我性(がしょう)の乾坤(けんこん)なり。渇仰(かっこう)すれば必ず応ず。勤修(ごんしゅ)すれば、定(さざ)んで至る。』
誠以是往古如來法身大士。其所居即我性乾坤,渴仰必應,勤修定至。


『所似(このゆえ)に、四種身(ししゅしん)の内には等流法身なり。利益を三世に施す。三部の身の間には、金剛部の身なり。威光を十方に輝かす。六大無碍にして常住瑜伽なり。四種曼荼(ししゅまんだ)、然も互いに相離れず。』
所似四種身内等流法身,利益三世,三部之身間金剛部身。威光輝十方。六大無碍常住瑜伽。四種曼荼然互不相離。


『三部を束ねて一身に収め、萬蔵(ばんぞう)を括って二法を論ず。円融無作(えんにゅうむさ)と談ずれば、三諦一諦(さんたいいったい)の妙境(みょうきょう)なり。』

三部束一身収,萬蔵括二法之論。円融無作之談則三諦一諦之妙境。


『權實(権実=ごんじつ)不二と観ずれ非三非一(ひさんひいつ)の法門なり。今、本地の甚深(じんじん)なるを聴いて、いよいよ霊天の奇特を培す。仍(よ)って、伽陀(かだ)を唱えて各々禮拝を行ずべし。』
權實不二,非三非一之法門。今聽本地甚深,種種霊天奇特,仍唱伽陀各々禮拝行矣。


『帰命毘盧遮那佛(きみょうーびーるーしゃーなーぶぅうう・・)一心法界無上尊(いっしんほうかいむーじょーそーん)事理円融住虚空(じーりーえんにゅうーじゅうーこーくうー)示現大聖歓喜天(じーげんだいしょうかんぎーてーん)南無大聖大悲歡喜天王哀愍於我悉地円満。(なーむだいしょうだいひーかんぎてんのうーあいみんおがしっちえんまーんんん・・>)』
帰命毘盧遮那佛一心法界無上尊事理円融住虚空示現大聖歓喜天。南無大聖大悲歡喜天王哀愍於我悉地円満。


第二段『第二に垂跡(すいじゃく)の化導(けどう)を讃ずとは。男天(なんてん)は即ち、大自在天の所変なり。天上天下(てんじょうてんが)の魔軍を退けて、今世後世(こんせこうせ)の利益を施す。女天(にょてん)はこれ、観自在尊の応化なり。』
第二讚垂跡化導。男天即天上天下退魔軍,今世後世施利益之大自在天所化。女天即觀自在菩薩應化。


『十一面(いちじゅういちめん)の聖容(しょうよう)を現じ、三十三身の妙體(みょうたい)を示す。夫婦抱立(ふうふほうりゅう)の姿は、二儀和合の相を現す。象頭人身(ぞうずじんしん)の形は、十界具有(じゅかいぐゆう)の理(り)を現す。或る時は二臂四臂を現じ、或る時は六臂八臂を現ず。皆是れ和光利物(わこうりもつ)の表示、随類応現(ずいるいおうげん)の体相(たいそう)なり。』
十一面觀世音菩薩現三十三身妙體聖容。顯現夫婦抱立,二儀和合姿相。象頭人身之形即十界具有。或二臂四臂,或六臂八臂。皆乃表示和光利物,隨類應現體相。


『外(ほか)には、忿怒(ふんぬ)の形を現すと雖(いえど)も、内には偏(ひとえ)に慈悲の心に住す。総じて是れ、折伏(しゃっぷく)攝受(しょうじゅ)の霊天なり。』
雖外現忿怒形,內偏住慈悲心。總言乃折服攝受之靈天矣。


『抜苦(ばっく)與樂(よらく)の薩埵(さった)に非ずや。内と云い、外と云い、仰がずんば有るべからず。仍(よ)って伽陀(かだ)を唱えて禮拝を行ずべし。』
無疑抜苦與樂之薩埵,内也,外也,仰賴則達成,仍唱以伽陀禮拝行。


『第三に誓願の殊勝なるを明かすとは。経に曰く、上品(じょうぼん)に、我れを持(じ)すれば我れ、人中(じんちゅう)の王たるを与え。中品(ちゅうぼん)に、我れを持すれば我れ、帝(てい)の師たるを与え。下品(げぼん)に、我れを持すれば我れ、富貴無窮(ふうきむきゅう*窮=ぐ可)なるを与えんと云々。』
第三明誓願殊勝。経曰、上品持我者,我予人中王。中品持我者,我與為帝師。下品持我者,富貴無窮矣。


『亦曰く若し人、諸天の為に捨てられて、我れを想えば即時に悉地を現じて皆円満すと云々。当に知るべし此の天の利生(りしょう)の方便は自余(じよ)八十余億の仏神に超過す。』
亦曰若人、諸天共捨,念想我時,即時悉地現皆円満云々。当知此天利生方便自余八十余億仏神超過。


『観(おもんみ)れば夫れ、人間の栄耀と云い、世間の運命と云い、諸神を頼むと雖(いえど)も、諸神は非禮(ひれい)を受けざるの故に非拠(ひしょ)を求めれば丹誠(たんせい)しばしば空し。』
観夫、人間栄耀、世間運命、虽賴諸神卻諸神非禮不受,故非處丹誠祈求亦空過。


『諸佛を仰ぐと雖も、諸佛は宿習(しゅくじゅう)に由るの故に、宿善無き者は、素懐(そかい)達し難し。低頭(ていず)合掌の功、徒(いたずら)に心身を労し、朝祈暮賽(ちょうきぼさい)の勤め、幣帛(へいはく)を費やすに似たり。』
雖仰諸佛,宿習由故,宿善無者,素懐難達。低頭合掌之功、徒勞心身,朝祈暮賽之勤,幣帛費矣。


『然るに此の歓喜天王は尚、無慙(むざん)の悪人をも捨て賜わず。賢父(けんぷ)の愚子(ぐし)を憐れむに相同じ。況(いわん)や有縁(うえん)の行者に和順すること、宛(あたか)も明王の忠臣に任ずるが如し。』
然此歓喜天王尚、不捨無慙悪人相賜,如賢父憐愚子。況有縁行者和順宛如明王之忠臣任如之也。


『於戯(嗚呼・・)加すべき加するは是、諸佛神の通例なり。加すまじきを加するこそは、唯(ただ)、大聖天様だけの別願に限れり。茲(これ)に因って貧乏の族(やから)、名号を唱えれば直ちに豊稔(ほうねん)の歓花(かんか)に誇(ほご)り、卑賤(ひせん)の輩、信心を凝らせば即ち高貴の官班(かんぱん)に登る。』
於戯嗚呼如是、諸佛神之通例。唯如是僅此大聖天別願限定。茲因貧乏之族,直唱名号即豊稔歓花相誇,卑賤之輩、信心凝者即登高貴官班。


『大小(たいしょう)顕密の学侶、各々法楽を致して以って其の業(わざ)を遂げ、詩歌管弦(しいかかんげん)の好士(こうし)、互いに技能を振ってその名を揚ぐ。』
大小顕密学侶、各々法楽致以其業,遂詩歌管弦好士互以技能振揚其名。


『肆(かるがゆえ)に、大願を発(おこ)すの人は、先ず此の尊に帰して満足せしむ。大名を期するの人は、専ら此の天を仰いで宿望を達し、古今勝計(ここんしょうけい)すべからず。』
肆發大願之人,先歸此尊に帰得満足。大名相期之人,専仰此天を仰達宿望,古今勝計皆如此。


『緇素男女(しそなんにょ)の肩を差(まじ)うるや、堂上(どうじょう)花の如く。老少親疎(ろうしょうしんそ)の志を運ぶや門前(もんぜん)市(いち)を、成(な)す。』
緇素男女肩差、如堂上花。老少親疎之志成運門前市。


『霊天の誓願、殊勝なること、此れを以って知るべし。悉地成就の速疾(そくしつ)なること、之を以って察すべし。仍って伽陀を唱えて禮拝を行ずべし。』
霊天誓願、殊勝之事此以盡知。悉地成就速疾之以察,仍唱以伽陀禮拝行。


『第四(だいし)に利益の無辺なるを仰ぐとは。魔界仏界の色相(しきそう)なり。時に随って顕現し、此土他土(しどたど)の遊行物(ゆうぎょうもの)に依って自在なり。』
第四仰利益無邊矣。魔界佛界之色相。時時隨即顯現此土他土遊行自在之尊。


『普現色身随類(ふげんしきしんずいるい)の形聲(ぎょうしょう)を十界(じっかい)に示し、和光同塵普問利益(わこうどうじんふもんりやく)を、六道に施す。』
普現色身隨類形聲示十界,和光同塵普問利益施六道。


『是を以って観世音菩薩大悲大慈の門戸(もんこ)より出で、三十三身の利益を設くるの内に、作障難者(さしょうなんじゃ)を降伏(ごうふく)する為に、毘那耶伽(びなやきゃ)の身形(しんぎょう)を現わし、仏法の行人(ぎょうにん)を護持せんが為に、速疾掲焉(けいえん)の利益を示す。』
是以,出觀世音菩薩大慈大悲門戶,三十三身利益中,降伏作障難者現毘那耶伽身形,護持佛法行人示現速疾揭焉利益。


『始め密厳花蔵(みつごんけぞう)の土(ど)より、終わり分段同居(ぶんだんどうきょ)の郷(さと)に至るまで。塵刹微塵刹(じんせつみじんせつ)、刹として至らざる所なく。沙界恒沙界(しゃかいごうしゃかい)、界として現れざる所なし。』
始於密嚴花藏,終於分段同居之鄉。塵刹微塵刹中無所不至,無界不現。


『上(かみ)は碧落(へきらく)に遊び、下(しも)は黄泉(こうせん)に入(い)りて、世々番々(よよばんばん)の利益、時として止(とど)まることなし。各々願望、事として空しからず。』
上遊碧落,下入黄泉,世々番々利益不止於時。各々願望、諸事不空。


『就中(なかんずく)一生(いっしょ)限り有り。百年遂に窮まる最後の時、臨終(りんじゅ)の刻みには、男天(なんてん)は無数の眷属を率いて四魔(しま)の群党を破り。女天(にょてん)は百寶(ひゃっぽう)の花台(けだい)を捧げて九品(くぼん)の淨刹(じょうせつ)に迎え賜う。』
就中一生大限百年遂窮最後之時、臨終之刻男天率無数眷属破四魔群党,女天澎百寶花台以九品淨刹相迎。


『利(り)は現当(げんどう)を兼ね、益(やく)は真俗(しんぞく)に被(こうむ)らしむをや。仍って伽陀を唱えて禮拝を行ずべし。』
利益兼併現當,真俗批被,仍以唱伽陀禮拜行。


『第五に廻向発願(えこうほつがん)を述ぶるとは。諸佛菩薩の群類を度するは皆是れ斯の尊の方便なり。諸神権現の衆生を化するは、寧ろ此の天の善巧(ぜんぎょう)に非ずや。』
第五述迴向發願。諸佛菩薩度群類皆以此尊方便。諸神權現化眾生無不此天善巧。


『若し、十方(じっぽう)諸佛の利益に預からんと欲(ほっ)する者は、須(すべか)らく此の天に供養すべし。若し、一切諸神の冥助(めいじょ)を蒙(こうむ)らんと欲する者は、須らく此の天に恭敬(くぎょう)すべし。』
若十方欲得諸佛利益者須供養此天,若欲蒙一起諸神冥助者須恭敬此天。


『一尊一天の讃嘆を致すと雖も、八十余億遍く諸佛諸神の威光を増す。之に依って、秘法勤修(ひほうごんしゅ)の砌(みぎり)には必ず此の天を供養し、建壇(こんだん)祈念の所には専ら此の像を安置す。然る間、感応是れ新たに悉地早就(しっちそうじゅ)す。』
雖讚嘆一尊一天,八十余億遍諸佛威光皆增。依此祕法勤修,供養此天,專安此像,建壇祈念之所。然其感應親新悉地早就。


『願わくばこの功徳を以って遍く一切に及ぼさん。沈々たる三界(さんがい)の群類世々の恩所(おんじょ)に非ずと云うことなく、蠢々(しゅんしゅん)たる六道の含識(がんしき)生々(しょうじょう)の親族に非ずと云うことなし。』
願此功徳遍一切,無不沈々三界群類世々之恩所、蠢々六道含識,生々親族。


『然れば早く一佛(いつぶつ)の芳縁(ほうえん)を結んで、同じく三菩提の妙果(みょうか)を期(ご)せん。廻向の功力(くりき)豈(あに)然らざらんか。あぁ、仰ぎ願わくば大聖大悲歡喜大天、必ず一座の講莚を納受し、速やかに二世(にせ)の所願を成就せしめ賜え。仍って伽陀を唱えて禮拝を行ずべし。』

然早結一佛芳縁,同期三菩提妙果。廻向功力不豈然哉。矣,仰願大聖大悲歡喜大天、必一座講莚納受,速賜二世所願成就。仍唱以伽陀禮拝行。


『願以此功徳(がんにしくどく)普及於一切(ふぎゅうおいっさい)我等與衆生(がとうよしゅじょう)皆共成佛道(かいぐじょうぶつどう) 尊天上様に導かれること、この上無き尊き道や・・』

随遍願以此功徳普及於一切我等與衆生皆共成佛道。尊天上者所引導,無上亦無尊之道。

『南無大聖大仁慈歡喜雙身天王 自他法界平等利益・・』 三遍

南無大聖大仁慈歡喜雙身天王。自他法界平等利益・・三遍

『オーム フリーヒ ギャクウン スヴァー ハー・・・』 

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